ものすごく汚くて、ありえないほど清潔。

人生のカミングアウトと、言語化の練習。

財務省のサイトにひそむ”ヤバい感じ”

昨年末、政府が「防衛費を5年以内にGDP比2%以上」という主張を掲げ、岸田総理が2023年度から5年間の防衛費を総額約43兆円とするよう指示したことは記憶に新しい。

 

この報道とともに、目下国民の関心事になったのは、「その財源を増税によって賄う」という旨の政府の方針だった。

 

私は経済や政治、国防について全くの素人である。

そのため、日本においてどれくらいの防衛費が必要なのか、それに応じて本当に増税が必要なのかといった内容には言及しない(正確には、言及するほどの知識などない)。

 

この「増税」が話題になった際、私は何の気なしに財務省のサイトを訪れてみたことがあった。

税金のことといえば財務省かな、この増税報道に関して、何か表明しているのかなといった具合だ。

 

一般の人からすれば、国の省庁のサイトを見るなんてことはごく稀だろう。

私も今回の報道がなければ、財務省のサイトを見てみようなぞ思いもしなかった。

 

サイトに行くと、こんなコピーが大きく掲載されていた。

 

なるほど。

財務省と聞くとまず浮かぶ「お金」的なイメージではなく、もう少し上位概念の、まるで首相やどこかの政党党首が語りそうな文句である。

 

何となく変だなとは思ったが、私はそのままページをスクロールした。

 

すると、こんなバナーを見つけた。

 

なるほど。

まさに、今話題の防衛費確保に向けた増税についてのスタンスが記されているのではと考え、クリックした。

 

思いの外、やたらとポップである。

まぁ、一見小難しそうな税金の話を、広く国民に説明するページであるという建付けであれば、特に不思議なことはない。かもしれない。

 

私はページ左上の「はじめに」という部分をクリックした。

すると、こんなページが表示された。

 

高齢化が急速に進み、社会保障関係費は年々増加しています。一方、財源は確保できておらず、子どもたちの世代に負担を先送りし続けています。

なるほど。

確かに日本は少子高齢化社会である。それに伴う社会保障関連の費用は増えて当然なのかもしれない。

そういう意味では「負担を先送りしている」のかもしれないと思わせる。

 

現在、この先送りの状況を打開し、持続可能な仕組みを次世代に引き渡すため、様々な取組を進めています。

次世代に明るい未来を残すため、
わたしたちが今、何ができるか一緒に考えてみませんか?

なるほど。

国家である以上、持続可能な仕組みは不可欠だろう。

国民として、それに興味と自覚を持つこともいささか不思議ではない。

 

消費税率引上げによる増収分は
全て社会保障に充てられています。

??????

誰も何も言っていないのに、いきなり「消費税」の話が出てきた

こちらは消費税のことなぞ頭の片隅にもない状態だったが、なぜいきなり突拍子もなくこのワードが出てきたのか。

私は非常に違和感を覚えたが、とりあえず「Ⅰ 日本の財政の状況」のパートに進んだ。

 

 

1 予算はどのような分野に使われているのか
2022年度補正後予算の国の一般会計歳出は、110.3兆円となっています。これは主に、①社会保障、②国債費、③地方交付税交付金等に使われており、これらで2/3を上回っています。
(1)「社会保障」:年金、医療、介護、子ども・子育て等のための支出
(2)「国債費」:国債の償還(国の借金の元本の返済)と利払いを行うための経費
(3)「地方交付税交付金等」:どこでも一定のサービス水準が維持されるよう、国が調整して地方団体に配分する経費

なるほど。

どれも言葉としては何となく理解できる気がする。

「国の借金」という言葉は、よくニュースでも「国民一人当たりで割ると〜」という内容で報道されるアレのことだ。

 

次のページに進む。

 

2 財政はどのくらい借金に依存しているのか
2022年度補正後予算の国の一般会計歳入110.3兆円は、①税収等と②公債金(借金)で構成されています。
現在、①税収等では歳出全体の約2/3しか賄えておらず、残りの約1/3は、②公債金(借金)に依存しています。
この借金の返済には将来世代の税収等が充てられることになるため、将来世代へ負担を先送りしています。
(1)「税収等」:所得税法人税、消費税等の税による収入とその他の収入
(2)「公債金」:歳入の不足分を賄うため、国債(借金)により調達される収入

なるほど。

こちらもわかる気がする。

要は収入が足りないから、歳出に必要なお金を借金で賄っているということを言いたいのだろう。

 

ただ、1つの疑問が浮かぶ。

ここでいう「借金」とは「誰が」「誰に」している借金なのか?

歳出のために借金をしているということは、「お金を借りている」のはおそらく日本政府だ。

借りたお金を、政府が様々な政策の実行のために使っている、という説明だろう。

 

では、誰が政府に貸しているのか?

疑問は一旦胸に留め、次のページに進む。

 

3 どのくらい借金に依存してきたのか
これまで、歳出は一貫して伸び続ける一方、税収はバブル経済が崩壊した1990年度を境に伸び悩み、その差はワニの口のように開いてしまいました。また、その差は借金である公債の発行で穴埋めされてきました。足もとでは、新型コロナウイルス感染症への対応のため、歳出が拡大しています。

なるほど。

日本の課題は山積みだが、それを解決するためのお金が足りない。

それを借金で賄っているという説明だろうか。

防衛費増大に伴う増税についても、この言論に内包されているように思えた。

 

4 日本の借金の状況
普通国債残高は、累増の一途をたどり、2022年度末には1,029兆円に上ると見込まれています。
また、財政の持続可能性を見る上では、税収を生み出す元となる国の経済規模(GDP)に対して、総額でどのぐらいの借金をしているかが重要です。日本の債務残高はGDPの2倍を超えており、主要先進国の中で最も高い水準にあります。

なるほど。

確かに日本は「借金」と呼ばれる国債を発行し続け、その額をどんどん増やしている。

その債務残高をGDPで割ると2倍以上であり、先進国の中では最大というのは事実だろう。

ただし、以下の点に大きく違和感を覚える。

  • 「日本の借金」と言っているが、先に確認したとおり、国債発行に伴って発生した債務は、正確には「政府の借金」のはずだ。
    • 「日本の借金」という言葉には、あたかも「我々国民も借金をしている」という誤ったニュアンスが含まれ、誤解される可能性がある。誤解を誘う表現には、必ず何かしらの狙いがあるはずだ。
    • いずれにせよ「借金をしているのは政府である」という事実を正しく認知しておくことが肝要である。
  • 先進国と比較して、政府の債務残高が対GDP比でエラい事になっていると言うが、各先進国も債務残高は増え続けている
    • 大きく違うのは、日本はバブル崩壊後、GDPがほとんど成長していない。他先進国は軒並み成長している。
    • つまり「債務残高÷GDP」をするとき、日本は分母であるGDPはほぼ変わらないのに、分子がどんどん増えているのである。他先進国は分母も増えているにも関わらず、だ。日本だけ「債務残高÷GDP」の数値が大きくなるのは当然のことだろう。
    • 債務残高の対GDP比を計算して悲観するより、バブル崩壊後の30年でGDPがほぼ変わっていないという事実をまずは知るべきだ。

出典:

monoist.itmedia.co.jp

 

5 「借金」の問題点
日本では、歳出と歳入の乖離が広がり借金が膨らんでおり、受益と負担の均衡がとれていない状況です。現在の世代が自分たちのために財政支出を行えば、これは将来世代に負担を先送りすることになります。

なるほど。

「日本は本当はやらないといけないことがたくさんあるけど、これ以上借金を増やすのは将来の世代の負担にもなるからなかなか踏み込めない」といったところか。

例えば公共事業等にお金を投じ、インフラを整え国民の生活を充実させることは将来世代のためにはならないのだろうか。

いま積極的にお金を使うことは、今の世代の自分たちだけのためになってよくない!」とは、「この先、国としての成長は見限る」ということに聞こえてしまい、非常に不安な気持ちになるのは果たして私だけだろうか。

 

 

以上でチャプター1は終了。

実に様々な疑問を心に植え付けてくれたものである。

 

以降、以下のようなチャプタータイトルで説明は続くのだが、

ここからは特に「???」となったパートを掻い摘んで見ていきたい。

 

国債費と社会保障関係費の割合が増えてるのはわかったが、実額ではなく比率で経年推移を見る意味がわからない。

このグラフはまるで、

  • この国に一番必要な社会保障にはお金を投じている
  • でも、それ以外のことにちゃんとお金をつかていない
  • それは、日本は借金が増えていて、その返済に追われているからだ

と言わんばかりの、少し極端な表現ではないだろうか。

 

まただ。

また唐突に消費税の話である。

まるで消費税によって社会保障のすべてが賄われているような書きぶりである。

 

主要各国と比べ、日本は国民の負担が少ないと言いたいのだろう。

逆に問いたい。なぜ他国は国民の負担が大きいのにも関わらず、GDPがちゃんと成長しているのだろうか

経済成長に向けて、国が適切にお金を使えているからではないのか。

 

そして「日本の財政を考える」は、以下のページで締めくくられている。

最後のページなのに、急に抽象的な表現になった。

ここまで頻出していた消費税や国の借金という言葉は、どこにも出てこない。

 

 

財務省は結局何を伝えたかったのか。

この一連のページに目を通せば、大体の人が以下のような感想を持つだろう。

  • 「日本って、借金がいっぱいあるんだ」
  • 「このままいくと、後世に負担を先送りにしちゃうんだ」
  • 「消費税って、大事な社会保障に使われているんだ」
  • 「日本って、他の国に比べて国民の負担が少ないんだ」

国民の何%が財務省のサイトなんぞに訪問するかは不明だが、訪問した私個人は、この財務省からの”いわくつきプレゼンテーション”に一抹の不安を抱いている。

 

その不安とは、

消費税はまた増税されるかもしれない

ということだ。

 

冒頭述べたとおり、私は経済や政治の専門家でも知識人でもない。

ただ、このサイトを見て素朴に感じた疑問をつなぎ合わせていくと、「日本の財政はヤバくて、この先もっとヤバいことになるかも。だから、みんなで負担に耐えようze」という空気を不自然に醸成しているように感じるのである。

 

「歪曲した視点だ」ということであれば、それは無自覚であるので是非ともご指摘を賜りたい。

私は単に、わざわざこんなポップなトーンのページを準備している財務省の狙いを知り、この国が抱えている本当の問題とは何かを知りたいだけである。

有識者の方々からのご意見を頂戴できれば幸甚だ。

 

 

最後にひとネタ。

 

1つの疑問が浮かぶ。

ここでいう「借金」とは「誰が」「誰に」している借金なのか?

歳出のために借金をしているということは、「お金を借りている」のはおそらく日本政府だ。

借りたお金を、政府が様々な政策の実行のために使っている、という説明だろう。

 

では、誰が政府に貸しているのか?

 

文中で記載したこちらの疑問について、ある方が明確な回答をしていたのでご参考までにご覧いただきたい

 

www.youtube.com

 

この方は以前、財務大臣だった。

そして、この動画はこの方が財務大臣になる前にお話された内容だそうだ。

今同じ質問をしたら、なんとお答えされるのだろうか。